富士挑戦
一富士
二鷹
三茄子
世間がボンボン言いながら、懐かしの友と思い出を語り合ってる中、ジャパン随一の高さを誇るマウントフジに挑戦してきた。
インド帰りの若干カレー臭、齢27歳T野くんと一年越しに叶った冒険。
普通なら御来光目的なのだろうが、社会人として翌日日曜も有意義に過ごすため、朝一出発の日帰り強行スケジュール。
睡眠不足・準備不足・強行スケジュール・曇り空の4点セットの中、まずはバスにて五合目まで。
事前に天気予報で調べてみると、富士の麓の降水確率100%。
絶対に雨が降るとは大きく出たもんだ。
しかし僕たちは、「山の天気は変わりやすい」を逆手にとって雨天決行。
その甘すぎるスピードワゴン並みの考えが、後に災いを及ぼすとは思いも知らずに…。
なんやかんやで五合目に付くと、日光も照り、頂上まで行けそう感がみなぎる。
準備を整え、Tシャツ一丁でいざ出発。
5合目〜6合目までは、世界記録タイ並みのスピードでちょかる。
もはや既に足腰はやられてたが、抜いた人に抜かれたら恥ずかしいの法則。
ゆっくり登っている時間はなかったが、初山登り二人組みにしてはまずまずの出だし。
事件はその後、6合目〜7合目にて。
既に遠く下の方から雷鳴が轟いていたのだが、登っているうちに雲が辺りを覆いつくすのが目に見える。
雷の轟音が明らかに近づき、雨が強くなってきたが、慣れていないこともあってか、何を思ったか、カッパを着ずに上着一枚だけ装備。
瞬間的に豪雨となり、足元はちょっとした洪水、空からは攻撃を続けるヒョウ、30秒おきにその辺で響く雷鳴…、ビショビショになった渋谷にもいそうな普段着の二人は、8月に凍えるという考えられへん状態。
正直何で来たのか後悔するしかなく、人生で初めて死を考えたふりをしながら山路を歩む。
それでも何とか目標にしていた7合目の山小屋に到着するが、閉店御免に阿鼻叫喚。
100Mほど上にも山小屋が見えるが、開いてるかどうか…。
行くも地獄戻るも地獄、周囲の流れに任せて、体の芯から凍えながらさらに進む。
リュックの一番奥と心の一番奥が雨でビショ濡れな状況で、何とか山小屋に到着。
ババ込みではあったが店は開いていて、とにかく文字通り九死に一生を得る。窮鼠猫も噛めず。
「うどんください」
肉うどんと称しながら、ほぼ素うどんなうどんを注文し、暖をとる。
しかし場所と状況で味覚はこうも変わるのか、その旨さはまるで飲んだ後のドンベエ級。
基本、宿泊客以外は長居は無用な感じで、みなさん勇敢に次々と先へお進みになられる。
「ココアください」
それに比べ、細かく注文を繰り返して少しでも体力を回復しようと試みる薄着な社会人二人。
やはり準備不足でインフラが最低な状態では、雨の中歩くのは厳しい…。
「メロンパンください」
もう登る気力と時間はなく、下山するタイミングを計る。
宴もたけなわ、雨こそ止んでないが、少し体が暖まってきたので下山を決意。
這う這うの体で下まで滑り降りる、その間も雷はとどまることを知らず…。
山はなめたらあかん、軽い気持ちで臨んだらケガする…、誰よりも軽い気持ちとなめ切った態度で臨んだだけに、身をもって感じた。
日本一の雄大さ、眺めのいい景色、空気の薄さ…、それ以上に雷の音だけが心に残る。
その後、山を降りてからは社会人パワーを炸裂させて、相変わらず上手な土日を過ごす。
その巧みっぷりに、死の恐怖からいい思い出への昇華に成功。
結局7合目までしか登ってないが、色んなことを考えさせられたようで、そうでもない週末だった。
※追伸
後から分かったことだが、自分たちが登っていたのと同じ高さ・時間帯に雷で亡くなった人がいたそう。
ほんと洒落ならんくらい怖かったし、そんくらい死が近いと感じただけに、とても他人事とは思えない。
自分たちが犠牲になってもおかしくない状況。
ご冥福をお祈りいたします。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080809-00000104-mai-soci