天体


みなさん、「夢」というものをもってるだろうか。


僕の周りには明確な「夢」を持って突き進んでる人、まだ漠然とした「夢」でしかない人、必死で捜索中の人、現実しか見ない人、何もかも放棄してる人・・・、色んな人間が存在する。
それに対して良し悪しをつける気はない。
というのも、そんなものは変化するものだし、価値観というものに優劣をつけることなんてできない。
ただ、誰しも一度は、特に小さい頃に「夢」に憧れたことがあると思う。


僕は小学生の頃の「夢」をはっきりと覚えている。


恥ずかしながら、僕は昔は天文学者になりたかった。
小学校の卒業アルバムの文集に、そうはっきりと記されているので間違いない。


僕は天体が好きだった。


勘違いしないで欲しい。
別にそれについて勉強してたわけじゃなかったし、ガリ勉君でもなかった。


なぜ天体が好きになったのかというと、そもそもは一冊の雑誌との出会いであった。


きっとみんなご存知であろう、今も発行され続けているNewtonという科学雑誌である。
宇宙のみならず科学全般を取り扱っている雑誌であるのだが、それに載っていた天体の美しい写真に心を奪われた。
小学校で習う天体の授業なんてたかがしれたものである。
たいした知識のない自分にとっては、宇宙の様々な現象を目で見れることに感激を覚え、謎の多い独特の世界に引き込まれていった。
気に入った時は親にNewtonを買ってもらったりしていた。
原理までは理解していなかったとはいえ、相対性理論についての知識なども吸収していった。


それともう一つ、たまに学校から青少年科学センターという施設に課外学習をしにいったことも原因の一つである。
宇宙の仕組みなどが小学生が楽しめるようにアプローチされており、中でもプラネタリウムは楽しみで仕方なかった。
地球の自転・公転、月の満ち欠け、数多い星座、ブラックホール、ビックバン、流星群、とにかく宇宙レベルのあらゆる現象に興味を持つようになった。
1万光年離れた星は1万年前の状態で見えること、それを利用して昔の地球の状態を知ることができること、星座にまつわるギリシャ神話、今考えれば別段たいした知識でもないかもしれないが、あの頃の僕には天体が「夢」になるには十分すぎるほど刺激的であった。


中学高校と進学するにつれて、いつの間にかあの時の「夢」は薄れていったが、時折思い出して本や雑誌に目を通したりはしている。


将来そっち方面を職にすることはまずないだろうが、あの頃受けた感銘だけは胸の奥にしまっておこうと思う。


たまには暗くて広い夜空をゆっくり眺めようじゃないか。